縦の歯跳びと横の歯跳び



 自転車の不具合のひとつに“歯跳び”と呼ばれる症状があります。ペダルを漕いだ時、特にスタートや上り坂などのダッシュ時に、ガシャン!!という大きな音とともに、一瞬チェーンが切れてしまったかと思えるぐらい踏み応えが無くなる症状です。“スカを食らう(名古屋弁?)”状態です。その後も、普通にペダルを回せば普通に走れてしまうのですが、もう一度強いトルクで踏み込むと、ガシャン!!が再発します。大まかな症状はこんな具合ですが、原因の違いにより微妙な症状の違いが有り、修理の方法も異なります。原因の見極めを間違えると、対策後も症状が改善されないこともあります。

 “歯跳び”の発生するメカニズムは単純な話です。チェーンとスプロケット(ギア)の噛み合わせが甘くなっているところへ、強い力でペダルを踏み込めば、一瞬噛み合わせが外れて空転して、次の歯先へ噛み合せがずれてしまうわけです。この原因として、縦方向に噛み合わせが甘くなっている場合は、部品の寿命とも言えるのですが、チェーンの伸びやスプロケットの磨耗があります。横方向に噛み合わせが甘くなっている場合は、シフトワイヤーのヘタリなどにより変速不良を起こしていることが原因となります。
 実は、横方向の場合は、少々の調整ですぐに正常に戻ることもあり、あえて“歯跳び”とは呼ばず、“変速不良”の一言で済ませることが多い。“歯跳び”には、重症のイメージがあり、事実縦方向の場合は、相当使い込まなければ(普通の方なら2〜3年以上)発生しませんし、対策も部品交換以外ありません。ところが、走っている限り症状は“縦”も“横”も区別が付きにくいので曲者です。“歯跳び”という言葉自体も、自転車業界やマニアの間以外ではあまり一般的では無いと思われます。早とちりの相手に「歯跳びするから直して。」と依頼されれば、まだ充分使用できる部品でも交換されてしまう恐れがありますのでご注意下さい。

 先日もこんなお客様がありました。第一声は「歯跳びするのでチェーン交換して。」
 ・・・ところが、症状が確認できません。目視でも明らかな伸びや磨耗はありません。問診でも“横の歯跳び”の可能性が高くなる。確かに走行距離は多めのお客さまではありますが、まだ使用半年の自転車です。さまざまに条件を変えて走行テストを行なった結果、どうやら“縦の歯跳び”では無かったようです。今回の原因は、シフトワイヤーのヘタリ、新車時の不適切な組み付け、軽度の変形、などの複合要因で、レバーの動きがディレイラーの正確な反応とならず、変速不良が発生したことによります。典型的な“横の歯跳び”です。チェーンを交換しなくとも正常に直すことが出来ました。その後いかがでしょうか。再発が無ければ、これで一件落着です。今後は予防的に定期点検整備を受けていただければ、“横の歯跳び”は防ぐことの出来るトラブルです。
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