サスペンションは必要か否か。
初心者の方は、最初の一台の自転車選びで、さまざまな面で悩むことかと思います。うちにもこんなご相談がよくあります。「やっぱりサスペンションはあったほうがよいですか?」答えはイエスでもありノーでもあります。
一般論は簡単です。マウンテンバイクなら、フロント・サスペンションに関しては既製品で“サス無し”を探す方が困難です。(もちろんカスタムやオーダーメイドなら可能です。) オフロードで気持ちよく楽して走りたいならリア・サスペンションも必要かもしれません。クロスバイクなら既製品で有り無しどちらの選択肢もあります。が、性能不足で意味の無いサスペンションが多いのも事実です。ロードバイクの場合は、普通は付いてません。それぞれ意味がある選択になっているわけですが。
まず、サスペンションに過大な期待をしないで下さい。歩道などによくある20pの段差を意識しないで容易く乗り越えようとするなら、サスペンションにも20pのホイールトラベル量が必要です。しかしそんな性能を持ち合わせた自転車は、競技用のダウンヒルマシンでも無い限り存在しません。通常のマウンテンバイク、最近では“フリーライド”なんて小ジャレタ言い方もしますが、高性能なものでも10pほどのホイールトラベル量しか無いので、足りていないのです。後輪は0pな“サス無し”自転車もあるわけだし、15年前は前後ともサスペンション無しが当たり前でもありました。ではどうやって段差を乗り越えれば良いのでしょう。
人間の体は立派なサスペンションであることを忘れていませんか。ひじや膝をタイミングよく曲げ伸ばしして、路面からの衝撃を逃がす。理想のイメージは、スキーのモーグル競技を思い出してください。トップレベルの選手は膝をやわらかく使い、常に板は雪面を捉え、頭は安定した高さを保っている。自転車なら加えてひじのサスペンションも活用して、前後のバランスをとることも出来ます。“人間サスペンション”をうまく使いこなせれば、50pのホイールトラベル量も可能です。日常生活にもヒントはあります。下りの階段で、最後の2〜3段を一気に飛び降りた時の膝の使い方です。緊張して膝に力が入ったままだと、着地の衝撃がビィーンと下半身を攻撃します。普通は無意識に着地のタイミングに合わせて膝をまげて軟着陸し、腰が下死点まで来たところで膝を伸ばす動作に移って次の行動に移行する。この一連の体の使い方が、連続的にスムーズにできるようになれば、スキーのモーグルもマウンテンバイクのオフロード走行も上達するはずです。
自転車の場合、“人間サスペンション”の足りない部分を補う意味で、自転車本体にもサスペンションが採用される場合があります。足りない部分とは絶対的な動きの量よりも、タイミングが合わなかった時の補助的な役割だったり、スタミナが切れ掛かった時にも安定した走行を保ったりする意味が大きい。段差の乗り越えが連続するようなオフロード走行を前提にしたマウンテンバイクには必須の装備なのかもしれません。さらにダウンヒル競技に限らず、下り坂を楽しむなら、より高性能なサスペンションが必要なのは、下りのスピードに“人間サスペンション”の反応が追いつかなくなるからです。また滑りやすいオフロード走行において、高性能なサスペンションなら常にタイヤの接地を助けますので、コーナーや減速時の安定感はもちろん、駆動輪の空転も抑えますので上り坂でもメリットがあります。頭が安定することで視線が安定して、路面情報を判断しやすくなることも大きなメリットです。振動で視力がぶれる恐怖感は経験した方にしかわかりにくいことかもしれませんが。
ならば、舗装路など安定した路面を走る場合のサスペンションの存在意義はあるのでしょうか。確かに舗装の継ぎ目や歩道の段差など気になるデコボコはあります。しかし総走行時間に比べればそれは一瞬の出来事。連続したデコボコ走行のオフロードとは違い、その一瞬さえ我慢すれば良いのです。必要に応じて減速し、進入角度を考慮して、その一瞬だけ“人間サスペンション”を意識して働かせる。それが出来ればサスペンションは必要ないのかも。さらにサスペンションを装着することによるデメリットとの兼ね合いも考えます。単純に考えても、複雑な構造物を余計に取り付けるわけですから、重量増加は大問題。また、(ありえない話ですが)完璧なセッティングが実現しなければ、乗り手が意図しない動きが発生し、駆動力をロスして体力を消耗しやすかったり、かえってバランスを崩して転びそうになったり。軽量化を進め、完璧なセッティングを目指して、各メーカーは次々に“理想的なシステム”の新製品を開発していますが、走行条件によっては“サス無し”の選択がベターなこともあります。また、“理想的なシステム”の製品には予算的な問題もあり、お財布と相談した上で“サス無し”の選択がベターなこともあります。“サス有り”なら性能を維持する為の手間とコストが必要なことも忘れてはいけません。
結論としては、自転車のジャンルに応じては決められません。あなたがどのような走り方や遊び方を求めているかによってお薦めは異なります。前後とも“サス無し”のマウンテンバイクも、“サス有り”のロードバイクもあり得るのです。“サス無し”であっても、自転車のフレームやホイールそのものが微妙にたわむ事を意図的に設計したものもあり、快適な乗り心地を得ることもできます。また“サス有り”であっても“理想的なシステム”で軽量な高性能モデルなら、“サス無し”と変わらぬ軽快な走りも実現できます。そして同じ“サス有り”であっても、用途ごとに性格付けに変化をもたせたさまざまな製品が市販されていますので、選択を間違うとデメリットばかりが強調された乗りにくいものとなります。さらにそのサスペンションをあなたが乗りやすいようにセッティングできなければ宝の持ち腐れ。
詳しくはお気軽にご相談下さい。自転車屋『 BikinG 』がお手伝いいたします。
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