裏読みの薦め。


(2005/01/17)

〜自転車の評価の難しさ〜

 毎年冬のこの時期、自転車のニューモデルが出揃い、雑誌などの試乗記事「インプレッション」は人気の企画です。自分が購入予定の車種が取り上げられていたりすると、つい目を通さずにいられない方も多いでしょう。本来なら自分で試乗できればよいのですが、その機会が無い場合、人の意見でも参考にしたくなるのもわかります。記事を信頼して自転車購入の決め手とする。・・・でもちょっと待って下さい。

 「・・・走りが軽くて良い自転車です。」などとあっさり書いてあったりしますが、比較の対象は何なのでしょう。

 「今回試乗した中では、」とあれば、今回取り上げられなかった“あのモデル”と比較するとどちらが良いのだろうか、と新たな悩みの種ができます。今年のニューモデルすべてを一気に試乗しました!なんていう企画があっても良いと思うのですが。それこそ年式を越えての試乗企画があれば、「旧年式でも○○の方が新型の△△よりも良い」なんてコメントもありうるかも。また、価格帯の異なるモデルでの比較となれば、装備されている部品の差が評価の差になることもあり、本来の自転車の性能を評価するなら同じ条件にする必要があるかもしれません。特にタイヤの差で大きく評価が異なることも考慮に入れておかなければ、正しく評論を読み取ることはできません。

 「・・・乗り心地の良い自転車です。」といっても、それは記事を書いた人の体感であって、あなたにとっても乗り心地が良いとは限りません。

 “乗り心地”などという主観的な要素を、文章で人に伝えることは、ただでさえ難しいことです。さらに“乗り心地”は自転車のセッティングによっても大きく変化します。特にサスペンション付きの自転車においては、スプリングの強さなどの設定が試乗者の体重や乗り方に合わせてあるかが大問題。「乗り心地が悪い自転車」も、設定をやり直すと良い評価に変わるかもしれません。試乗の現場にメーカーのメカニックが同行するぐらいの意気込みがあっても良いと思うのですが、なぜかそうで無い場合が多いようです。
 また、サスペンションが無いロードレーサーなどでも、車体(フレーム)そのものが微妙にたわむことでサスペンション的効果を得ているのですが、対象の自転車の設計上で想定された体重に合っているかが大問題。体重75kgの試乗者が心地よい自転車も体重55kgの人には硬い乗り心地になったり、体重60kgの試乗者が心地よい自転車は体重90kgの人にとってはフニャフニャで気持ち悪いものかもしれません。
 さらに、用途や目的にあった“乗り心地”があるはずで、競技用としては充分な乗り心地の自転車でも、ツーリングで使うには硬い乗り心地であることもあります。評論家が何を言わんとしているのか、行間や裏を読むことが賢い読者に求められます。

 「・・・ガッチリとした自転車です。」とは、丈夫で壊れにくいという“強度”のことを言っているとは限らない。

 十中八九、“剛性”のことを言っているのであって、“強度”や“耐久性”にも当てはまるとは限らない。“剛性”とは力が加わった時のたわみがどれほど発生するかの指標であり、変形したまま元に戻らない状態は破損状態であって“強度”が弱かった、ということです。
 剛性の話に戻します。ペダルを漕いだ時に車体がグニャグニャしなるようでは、脚力が加速力に変換されるのにロスが発生します。高速コーナーなどで車体がブルブル震えるようでは安定した走行ラインを保てません。体重が軽くパワーの無い人にとって「ガッチリとした自転車」でも、ヘビー級でパワフルな人にとっては「ヘニャヘニャ自転車」と評価されるかもしれません。これは前出の“乗り心地”とも微妙にリンクした話です。また、自転車のフレームを設計する上で、単純に外径を太くしたり肉厚を上げたりして剛性感を改善させれば“強度”も増すわけですが、単純なやり方では重量も増える一方で、それでは高級モデルとしては許されません。ロードレーサーや、マウンテンバイクのXCモデルなどの高級モデルになればなるほど高い剛性感と軽量化が求められ、素材や形状の工夫で実現していますが、その割には“強度”は必要最低限で許されてしまっています。中級モデルの方が丈夫で長持ちな場合もありうるのです。
 多少乱暴に扱っても丈夫で長持ち、といった“強度”や“耐久性”に関わる評価は、いずれにせよ一度や二度の試乗で結論を出すことは難しいことです。

 結局、一方的な他人の意見では自分にとっての良し悪しは決められません。また自ら試乗できる機会を得たとしても、限定されたコースでなおかつ短時間では間違った結論を出しかねません。だからこそ、自転車購入にはカウンセリングが不可欠であると考えます。一方的な情報だけではなく、実際の自転車を目の前にしての話のやり取りと、さらに試乗を繰り返し、また論議を重ね、あなたにピッタリの自転車を見つけてください。自転車屋『 B i k i n G 』がお手伝いいたします。

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